ボーイスカウト活動における情報管理の課題
ボーイスカウトの活動には、スカウトの成長の証として「進級章」という制度があります。
特定の進級章を申請する際には、これまでの活動記録をまとめた申請書を提出する必要があります。
しかし、この記録作業は現場の指導者にとって大きな負担になっています。
スカウトの活動は長期にわたり、しかも管理形式が団ごとに異なります。
記録が紙やExcelなど複数の形式で保存されているため、隊長の交代時にデータが失われるケースも珍しくありません。
私自身、隼スカウト章の申請時に10年以上前の活動を遡る必要がありましたが、
当時の記録が見つからず、指導者と共に過去の報告書を探し回ることになりました。
この経験から、情報が一度失われると再現が極めて困難であることを痛感しました。
開発のきっかけと目的
指導者の方々へのヒアリングの中で、「記録がないから書けない」「データを引き継げない」という声を多く聞きました。
この問題の根本は、情報の分散管理と記録の属人化にあります。
この課題を解決するため、私は「My History of Scouting」というWebアプリケーションを開発しました。
目的は、スカウト一人ひとりの活動記録を安全かつ統一的に保存し、
団の中で継続的に活用できる仕組みを作ることです。
アプリのコンセプトは「進歩壁掛け表のデジタル化」です。
カブスカウトでは、紙の進歩壁掛け表にスカウトの進級状況を記録します。
私はこの紙の仕組みを参考に、データをクラウド上で記録・共有できる仕組みを設計しました。
アプリで実現した機能
My History of Scouting はブラウザ上で動作するWebアプリケーションです。
パソコンやスマートフォンからログインし、スカウトの活動記録を入力・参照できます。
主な機能は以下の通りです。
- スカウトの基本情報(氏名・所属団・入団日)の登録
- 進級履歴および技能章の取得履歴の管理
- ちかいを立てた日や活動場所の記録
- 団体ごとのアクセス制御による安全な閲覧管理
これらの情報はすべてクラウド上で保存され、団の指導者が共同で管理できます。
データはリアルタイムに同期されるため、複数の端末で同時に編集しても矛盾が生じません。
現場からの反応
試験的に導入した団の指導者からは、次のような反応がありました。
- 「申請書の作成が格段に楽になった」
- 「前の隊長の記録を探す必要がなくなった」
- 「技能章の進捗を一覧で確認できるのが便利」
また、発表会でのデモでは「スカウト自身が自分の記録を見られるようにしてほしい」という意見もありました。
このフィードバックは、今後の改良計画において重要な方向性になりました。